
AGA(男性型脱毛症)の治療薬の1つに「ザガーロ」というものがあります。
ザガーロは2015年8月に厚生労働省から製造販売をしたばかりの新薬です。
ザガーロの効果や特徴について詳しく解説していきます。
目次
ザガーロとは
ザガーロという薬を理解する上で、開発経緯や「ザガーロ」と「デュタステリド」の違いなどの基本的概要を解説していきます。
ザガーロ開発経緯
ザガーロという薬には「デュタステリド」と呼ばれる有効成分が配合されています。このデュタステリドは最初から薄毛治療薬として開発されたのではなく、前立腺肥大症の治療薬として開発された薬です。
前立腺肥大症の治療薬として使用されていた際の名称は「アボルブ」でした。
このアボルブという薬には薄毛改善効果があるということが偶然発見され、その有効成分であるデュタステリドが薄毛治療薬として開発されて登場したのが「ザガーロ」になります。
ザガーロの販売元はイギリス・ロンドンに本社をもつグラクソ・スミスクライン社になります。
また、有効成分が同じものの対象疾患が異なるため、アボルブは黄色、ザガーロはピンクと識別可能なように製剤の色が違います。
ザガーロ・デュタステリド・アボルブの違い
「デュタステリド」やら「ザガーロ」やら「アボルブ」やら、聞き慣れない単語が沢山出てくると混乱してしまいますよね。ここで一旦この3つの定義と違いをまとめます。
アボルブの定義
アボルブは先程説明したように、前立腺肥大症の治療薬の薬の名前です。
日本では2009年の7月に「アボルブカプセル0.5mg」として製造販売承認を取得しています。
デュタステリドの定義
デュタステリドは、グラクソ・スミスクライン社が開発したAGA(男性型脱毛症)の改善に効果が期待される有効成分の名称になります。
ザガーロの定義
ザガーロとは有効成分デュタステリドを配合したグラクソ・スミスクライン社が製造・販売している商品名になります。
ザガーロの形状
ザガーロは淡橙色または淡紅色不透明の楕円型のカプセル剤です。
ザガーロカプセルには有効成分デュタステリドの含有用が0.1mgと0.5mg配合された2種類があります。
デュタステリド含有量0.1mgが淡橙色、含有量0.5mgのものが淡紅色をしています。
なお、有効成分であるデュタステリド以外に添加物としてジブチルヒドロキシトルエン、中鎖モノ・ジグリセリド、ゼラチン、グリセリン、濃グリセリン、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、中鎖脂肪酸トリグリセリド、レシチンなどが含まれています。
ザガーロの用法および用量
男性成人は通常0.1mgもしくは必要に応じて0.5mgを1日1回決まった時間に服用します。ザガーロは女性の服用は禁止されている薬ですので十分に注意して下さい。
ザガーロの効果に関する注意点
ザガーロが効果を発揮するには以下の注意点を抑えておくことが必要です。
飲んでも全然効果がなかった…なんてことのないように以下で解説します。
AGA(男性型脱毛症)にのみ効果を発揮する
ザガーロの有効性および安全性のデータが確認されているのはAGA(男性型脱毛症)にのみです。脱毛の種類には円形脱毛症や、皮膚病に起因するもの、内科的疾患によるものなど様々な要因が考えられます。また、実際は薄くなっていないのにも関わらず髪の毛が薄くなってしまったと感じてしまう精神的要因も考えられます。
このように薄毛の原因は幅広く、素人判断で原因を特定することは難しく危険です。
ザガーロは薬です。必ず専門医の処方を受けた上で使用して下さい。
20歳未満には安全性・有効性が確立されてない
ザガーロは20歳未満を対象とした臨床試験は実施していないので、この年齢層における安全性および有効性は不確かと言えます。
予期せぬ事態に遭遇しない為にも20歳以下の場合は服用しない方がいいでしょう。
6ヶ月は薬の服用を続ける
ザガーロは投与開始後12週間で改善がみられる場合もありますが、治療効果を評価するには通常6ヶ月間の治療が必要とされています。
半年以内に効果がないからといって服用をやめてしまうと、効果が体感できないまま終わってしまう可能性があります。
6ヶ月間は最低でも服用して様子をみて、それでも効果が見られない場合は医師の指導のもと、投薬の継続か中止かを検討して下さい。
ザガーロがAGA(男性型脱毛症)に効くメカニズム
どのようにしてザガーロがAGA(男性型脱毛症)の症状にアプローチしていくか解説していきます。
その前に、AGA(男性型脱毛症)が引き起こされるメカニズムについて解説していきます。
AGA(男性型脱毛症)のメカニズム
AGA(男性型脱毛症)のスタートは睾丸や副腎で作られる男性ホルモンの1種である「テストステロン」です。テストステロンは通常男性らしい骨格や筋肉を形成する働きがあり、全身の血液内を巡っています。
その後、テストステロンは頭髪の毛根近くに存在する5αリダクターゼと呼ばれる還元酵素と結合し、より強力な男性ホルモンである「ジヒドロテストステロン」に変換されます。
さらにこのジヒドロテストステロンがアンドロゲンレセプターと呼ばれる受容体と結合することで、髪の毛を作りだす毛母細胞の活動を抑制させてしまいヘアサイクル(毛周期)が乱れてしまうことで抜け毛が増え、髪が薄くなっていきます。
AGA(男性型脱毛症)のメカニズムとヘアサイクル(毛周期)については以下でより詳しく解説しています。
AGA(男性型脱毛症)のメカニズム
ヘアサイクル(毛周期)
これを踏まえた上でザガーロの効果のメカニズムを解説していきます。
ザガーロの作用機序
先程、AGA(男性型脱毛症)は、テストステロンと5αリダクターゼ還元酵素とが結合して変換された物質である「ジヒドロテストステロン」が原因とお伝えしましたが、この5αリダクターゼ還元酵素にはⅠ型とⅡ型が存在しています。
存在している場所 | |
5αリダクターゼⅠ型 | 側頭部と後頭部の皮脂腺 |
5αリダクターゼⅡ型 | 前頭部と頭頂部の毛乳頭 |
ザガーロに含まれるデュタステリドという成分は、この5αリダクターゼのⅠ型およびⅡ型の両方がテストステロンと結合するのを阻害し、ジヒドロテストステロンの発生を抑制させることで脱毛症に対する改善効果を発現すると考えられています。
ザガーロの効果
AGA(男性型脱毛症)の男性に24週間投与した際、頭頂部直径2.54cm円中において、毛髪の数がどのように変化量したのかという試験結果を見ると、デュタステリド0.5mgを摂取した場合、試験開始からおよそ90本の増加と最も髪の毛の量が増える結果になりました。
次いでデュタステリド0.1mgを摂取した場合が2番目に多く、およそ60本の増加が見られました。
ザガーロの副作用について
国際共同試験において、デュタステリドが投与された総症例557例(日本人120例を含む)中、95例(17.1%)に副作用の報告が出ています。
主なものは勃起不全24例(4.3%)、リビドー(性欲・性衝動)減退22例(3.9%)、精液量減少7例 (1.3%)でした。
日本人においては、120例中副作用の報告があったのが14例(11.7%)でした。
主なものはリビドー(性欲・性衝動)減退7例(5.8%)、勃起不全6例(5.0%)、射精障害2例(1.7%)でした。
なお、ザガーロを日本人に長期的に投与した試験においては120例中20例(16.7%)の副作用の報告がありました。
主なものは勃起不全13例(10.8%)、リビドー(性欲・性衝動)減退10例(8.3%)、射精障害5例(4.2%)でした。
長期的な服用で副作用の起こる可能性が高まると言えます。
ザガーロの服用に関する注意事項
安全に使用する上で、以下の点には十分な注意が必要です。
1 5αリダクターゼ還元酵素阻害薬に対し過敏症の既往歴がある
以前デュタステリドに対して過敏症の既往歴のある場合、重篤な過敏反応が発現する恐れがあります。
またフィナステリドなど、5αリダクターゼ還元酵素阻害剤に対する過敏症の既往歴がある場合も同様に使用は禁止とされています。
2 女性
妊婦がデュタステリドを摂取した場合、胎児の外生殖器の発達が阻害される可能性があります。その為、妊婦だけでなく女性はデュタステリドの摂取は絶対にしないでください。
またデュタステリドは、ウサギを用いた実験で経皮吸収が確認されているため
女性は薬に触れることも厳禁です。
AGA(男性型脱毛症)の治療でデュタステリドを使用している男性と一緒に住んでいる女性は、十分な注意が必要です。万が一触れてしまった場合は石鹸と水を用いて直ちに洗い流して下さい。
3 20歳以下の男性
ザガーロは20歳未満を対象とした臨床試験は実施していないので、安全性および有効性は不確かと言えます。
インターネットでもザガーロのジェネリック医薬品が簡単に購入できますが、自己判断で購入するのは危険なのでやめた方が賢明と言えます。
また、女性の場合は年齢に問わず使用は厳禁です。
ザガーロの価格
ザガーロの価格相場はだいたい30日分で12,000円~13,000位になります。
ザガーロ自体は保険適用の医薬品ではないため、販売元が自由に価格をつけることができ、8,000円~9,000円くらいで購入できる場合もあるようです。
また、同じ5αリダクターゼ還元酵素阻害剤であるフィナステリドは、クリニックで処方した場合5,000円~6,000円の価格帯が多く、ザガーロよりもフィナステリドの方が安価と言えます。
まとめ
今回はAGA(男性型脱毛症)治療薬の一つであるザガーロについて解説しました。
ザガーロは商品名で、有効成分にはデュタステリドという成分が配合されています。
デュタステリドは男性ホルモンと5αリダクターゼⅠ型・Ⅱ型が結合するのを阻害し、AGA(男性型脱毛症)の原因となるジヒドロテストステロンの発生を抑制することで薄毛を改善させる薬です。
デュタステリドは個人で判断せず、医師の診断のもとに服用してください。