ノコギリヤシの育毛効果とは?薄毛効果のメカニズムや副作用について解説

ノコギリヤシの育毛効果とは?薄毛効果のメカニズムや副作用について解説

ノコギリヤシという植物から抽出されるノコギリヤシエキスは頻尿・尿漏れなどの泌尿器系の悩み対策のサプリメントに配合されています。
また、前立腺肥大症に効果があることから、AGA(男性型脱毛症)の治療で使用されているフィナステリドと同じ効果があるのでは?と育毛効果にも注目がされています。
今回はノコギリヤシの薄毛対策効果について調査しました。

ノコギリヤシとは

ノコギリヤシ
まずはノコギリヤシがどのような植物なのか?解説していきます。
ノコギリヤシは米国東部が原産のヤシ科の植物です。1メートル程の細長い葉が扇状に付いているのが特徴で、葉の形がノコギリの葉のようにギザギザしていたことからこの名前が付きました。
冬になると2~3cmほどの果実を実らせ、その果実を搾って抽出したエキスは、古くから民間療法に使われてきました。

ノコギリヤシの健康効果

ノコギリヤシは、原住民である北米インディアンが古くから男性の強壮剤として用いられてきた歴史があります。
そのことから男性ホルモンに何らかの影響があるのではないか?と考えられるようになりました。
また、19世紀にヨーロッパに伝承された後はノコギリヤシは前立腺肥大の影響で起こる排尿障害を抑えることを目的として利用されるようになり、前立腺肥大薬としての研究がすすめられています。
しかし、日本においては医薬品として認められる科学的根拠に乏しく、健康食品として使用してもよい程度でしかありません。

前立腺肥大とは

前立腺の位置を表した図
岐阜大学医学部

前立腺とは、男性だけが持つ生殖器の1つで、膀胱のすぐ下に尿道を取り囲むように位置しています。
精液の産生や、射精、排尿を調整する役割を果たしています。
通常は栗の実程度の大きさですが、肥大して大きくなると尿道を圧迫して狭くしてしまうことがあります。これが前立腺肥大症です。
原因としては、遺伝・食生活・肥満・高血圧・高脂血症が考えられていますが、最大の発症要因は加齢だと考えられています。

前立腺肥大症とジヒドロテストステロンの関係について

前立腺肥大症の病態については完全に解明されていませんが、AGA(男性型脱毛症)の原因物質である「ジヒドロテストステロン」が関与しているのでは?と考えられています。
前立腺は胎生12週頃から発生し、精巣からのテストステロンが前立腺内で5αリダクターゼと結合してジヒドロテストステロンに変換された物質によって刺激され、成長していきます。
このように、前立腺の成長にはジヒドロテストステロンが大きく関わっていますが、AGA(男性型脱毛症)の場合、このジヒドロテストステロンがヘアサイクルを乱し、抜け毛を増やし薄毛を引き起こします。

前立腺肥大症に対するノコギリヤシの有効性

日本泌尿器科学会が策定している前立腺肥大症診療ガイドラインでは、これまで国内外から報告された多くのノコギリヤシに対する研究報告から、その有効性について検証されています。その結果、前立腺肥大症に対するノコギリヤシの有効性は明確には評価されず、推奨グレードはC2(十分な科学的根拠がないので、推奨ができない)となっており、「有効性を支持する根拠は乏しい、または一貫しない。 安全性の保証も不確実で,患者負担も高い」と判断されています。しかし、症状が改善したとする報告もあり、人によっては効果が期待できる可能性があります

ノコギリヤシが薄毛に効くと言われる理由

前立腺肥大症の治療にも使われるノコギリヤシエキスですが、なぜAGA(男性型脱毛症)の治療薬として注目するようになったのでしょうか?
それには次のような仮説が考えられます。
前立腺肥大症の治療薬に使用される成分がAGA(男性型脱毛症)の原因である5αリダクターゼという酵素を阻害することが分かり、これが開発されて治療薬になったものにフィナステリドやデュタステリドです。
フィナステリドやデュタステリドと同じように前立腺肥大症を抑制させる効果の期待できるノコギリヤシエキスも、ジヒドロテストステロンの生成を抑制し、AGA(男性型脱毛症)の進行を抑制させるのではと考えられるようになったのではと推測できます。

ノコギリヤシがAGA(男性型脱毛症)にも効果があるという論文

日本において、ノコギリヤシはAGAに有効であるという科学的根拠は少なく、投与量や投与期間を変えた治験結果があるわけではありません。
否定的な結果が出る前にも、短期的な投与では認められなかった効果が長期的に続けることで効果が現れたという結果もあるようです。

ノコギリヤシの育毛効果に関する論文

初期から中期のAGA症状の患者100人を2つの班に分けて2年間にわたる長期投与試験を実施した結果になります。

A ノコギリヤシを1日320mg、2年間毎日投与
B フィナステリド1mgを2年間毎日投与

2年後、効果を実感できた患者は、ノコギリヤシ投与グループで38%、フィナステリド投与グループで68%という結果が出たことで、フィナステリドには効果が及ばないもののAGAの症状を改善する効果があると言えます。

Comparitive effectiveness of finasteride vs Serenoa repens in male androgenetic alopecia: a two-year study.

また、改善傾向が見られた患者においてフィナステリド投与の患者は前頭部と頭頂部に効果が見られたのに対し、ノコギリヤシ投与グループでは前頭部のみであったという結果になったこともノコギリヤシにみられる特徴です。

この論文以外にも、タイの研究グループは20~50歳の男性に24週間ノコギリヤシエキスを摂取させた結果、飲む前に比べて毛量が増加したという研究結果を報告しています。
さらに米国の研究グループはAGAを発症している23~64歳の男性10人にノコギリヤシエキスを飲んでもらった結果、6人に改善傾向が見られたという結果が報告されています。

ノコギリヤシの薄毛に効果を発揮するメカニズム

AGA(男性型脱毛症)は前頭部や頭頂部に存在しているアンドロゲンレセプター受容体とジヒドロテストステロンが結合することでヘアサイクルが乱れ、髪の毛が抜け落ちてしまう症状です。
ノコギリヤシに期待される効果は以下の2点が考えられています。

■ 5αリダクターゼを阻害してジヒドロテストステロンの合成そのものを抑制する。
■ 合成されたジヒドロテルとステロンがアンドロゲンレセプターと結合するのを阻害する

ノコギリヤシがジヒドロテストステロンを減少させた実験結果のグラフ
BGGJAPAN株式会社

上記グラフはテストステロンを含むCOS細胞にノコギリヤシもしくは医薬品であるフィナステリドを添加し、培養後、細胞中のジヒドロテストステロン濃度を測定した結果です。その結果、ノコギリヤシは5αリダクターゼのⅠ型とⅡ型の両方の活性を阻害する働きがあり、ジヒドロテストステロンの生成を抑えることが確認されています。
ただし、この結果は人体での実験ではなく、あくまで培養細胞を用いた実験結果になります。

http://www.nibiohn.go.jp/eiken/hn/modules/pico/index.phpcontent_id=284.html

ノコギリヤシの副作用とは

ノコギリヤシの副作用には、吐き気、胃腸障害、めまい、頭痛、血圧上昇、便秘、下痢、不眠、腹痛などの報告がありますが、いずれも軽度のものが多いようです。
消化器系に不安がある人や高血圧の場合は摂取を控えた方が良さそうです。

DHTから男性ホルモン誘導体への変換を触媒する3-ketosteroid reductaseという酵 素の阻害作用も抗男性ホルモン作用に関連すると報告されています
※DHT … ジヒドロテストステロン
健康・栄養フォーラム

特に血栓症や動脈硬化などの出血性疾患の治療を受けている場合は要注意で、ノコギリヤシを摂取する際は事前に担当医師に相談する必要があります。

まとめ

ノコギリヤシは前立腺肥大症の治療薬に使われる植物です。
フィナステリドやデュタステリドの医療薬程の効果はありませんが、ノコギリヤシには5αリダクターゼⅠ型とⅡ型の両方とテストステロンが結合し、ジヒドロテストステロンに変換されるのを阻害する効果が期待できます。
使用の際は、副作用に十分注意しながら薄毛対策に取り入れてみてはいかがでしょうか?

本記事の寄稿者情報

鈴木亮輔
31歳独身。趣味はPCの自作と猫カフェ巡り。新宿のIT会社に勤務するサラリーマンです。20代中盤から徐々に抜け毛が増えて薄毛(M字部分)になり始め、長年に渡り自身で育毛剤を自作するなどの抜け毛や薄毛の改善方法を模索した実体験や、AGAクリニックの通院体験を活かして記事の執筆をしています。薄毛に悩む人は一人でも減ることを祈って、薄毛や育毛対策に有効となる情報を発信をしていきます。
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