
脱毛症の中でも頻度の高いものに円形脱毛症が挙げられます。
円形脱毛症の原因は諸説考えられていますが、「自己免疫疾患」を原因とする説が最も有力です。今回は円形脱毛症の症状や、日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドラインで制定されている治療法などを解説していきます。
目次
円形脱毛症の症状
ある日突然、円形もしくは楕円形の脱毛斑に気づくことが多いのが円形脱毛症です。
大多数の方は、鶏卵大までの脱毛斑が1~数個生じるることが多いとされていますが、時として多発したり、多発したものが融合して地図状に大きく脱毛してしまうケースもあります。
円形脱毛症の症状は頭部だけではなく、全身の毛組織(眉毛、まつ毛、顎髭、腋毛、陰毛など)にも起こる可能性があります。
脱毛は一般的には無毛な状態ですが、まばらに毛が残る場合もあります。
しかし、これらの毛は休止期毛なので、後で必ず脱落します。
この時、白毛は脱毛しません。
円形脱毛症の種類
円形脱毛症は大きく4型に分けることが出来ます。更に多発型と全頭型には特殊型があり、それを追加すると9型に分類することが出来ます。
このことからも円形脱毛症の症状は多岐に渡ると言えます。
脱毛範囲が狭い場合は自然治癒するケースも多く、また治療によく反応します。
しかし、脱毛範囲が広範の場合の自然治癒は難しく、治療に対して治りにくいと考えられています。
まず、一般的に分類される4つの型から解説していきます
単発型
単発型の円形脱毛症とは、円形または楕円形の脱毛ヶ所が頭に発生する症状です。
脱毛している部分は完全に髪の毛が抜けている場合と、まばらに残っている場合とがありあり、サイズは500円玉程度の大きさです。
円形脱毛症以外にはトリコチロマニア(抜毛症)にも同じような症状がみられます。
多発型
円形または楕円形の脱毛斑が2ヶ所以上みられ、脱毛を何度も繰り返してしまう症状を指します。
この場合、1つの脱毛ヶ所が改善されても、別の場所に症状が現れてしまうようになります。脱毛している脱毛斑の数が多い方や何度も繰り返して脱毛してしまう症状の現れる方は多発性円形脱毛症の可能性が考えられます。
全頭型
全頭性の円形脱毛症とは、頭部が全体的に脱毛していく症状で、単発型や多発型の脱毛症がさらに進行してしまうと髪の毛が全体的に抜けるようになり、全頭性へと進行して行きます。
つまり、ある日突然全頭性の円形脱毛症になってしまったということは考えにくいと言えます。
通常型
単発型の円形脱毛症と、狭い範囲の脱毛斑が数個までの多発型を含めて通常型円形脱毛症と呼ばれます。このタイプの円形脱毛症は治療に対してよく反応し、自然治癒することもあります。円形脱毛症のうち、90%以上がこのパターンと言われています。
多発融合型
広範囲に多数の脱毛斑を生じ、これらが融合して不整形の地図状の脱毛斑が見られます。
治療に抵抗して難治となります。
蛇行型
多発融合型の1種で、後頭部から側頭部にかけて髪の生え際も脱毛します。
この、蛇行型の円形脱毛症は小児に多く、極めて難治とされる円形脱毛症です。
びまん型
びまん型の円形脱毛症は全頭型の1種で、明らかな脱毛斑は見られず、頭全体の広範囲に脱毛していきます。このびまん性の円形脱毛症は、さらに急激に脱毛する委縮毛性脱毛とゆっくり脱毛する(棍棒毛性脱毛)に分類することが出来ます。
このびまん型の円形脱毛症は自然治癒傾向が強く、特に治療せずとも発症3ヶ月目くらいから毛再生が起こり、1年以内には治癒すると言われています。
急性型
急性型の円形脱毛症は全頭型の円形脱毛症の一部で、特に若い女性がこの症状を発症した場合、治療によく反応して1年以内には治るとされています。
円形脱毛症の原因とは
円形脱毛症の原因は、これまでストレス説やホルモン説が一般的でしたが近年は自己免疫説が主流になってきました。主な2説を紹介していきます。
自己免疫説
抗原抗体反応は異物(異種たんぱく)に対する反応ですが、身体の構成成分(細胞など)が何らかの原因で異物だと誤認されることがあります。
この原因は正式には分かっておりません。
円形脱毛症では毛母細胞が引き金になります。毛母細胞が異物と誤認されると、Tリンパ球が排除しようと毛母細胞を攻撃します。
その結果、毛母細胞が障害を受け、毛の産生が止まり、成長期性脱毛症を発症します。
これを自己免疫反応(病)といいます。
この時、ターゲットになる毛包は黒い髪の毛の生えた成長期毛包です。
休止期毛包は毛母細胞が細胞死している為、Tリンパ球の攻撃を受けません。また、白毛の毛包は色素細胞の機能が障害されている1種の異常毛包なので、これもTリンパ球の攻撃を受けません。
円形脱毛症の症状で不完全脱毛斑を生じたり、白髪だけ抜けずに生えているといった現象が起こるのはこのためです。
ストレス説
ストレスは心的負担になる出来事と解釈できます。
初発時にストレスによって円形脱毛症が発症したと思われた人が、次に同じストレスにあったとしても円形脱毛症が再発することは稀です。
ストレスは引き金になることがあったとしても一部の人のみの原因と考えられます。
多発性の円形脱毛症と単発性の円形脱毛症はどちらの方が完治しやすいか
円形脱毛症の回復率は、「単発型だから治りやすい」「多発型だから治りにくい」ということは関係ありません。
ポイントは脱毛範囲や発症からの経過時間が大きく関係してくると考えられています。
円形脱毛症診療のガイドラインには、円形脱毛症の誘因として知られる「アトピー素因」や「自己免疫疾患」を持たない人の場合、発症して1年以内の「単発型」もしくは脱毛部位が少量の「多発型」であれば、80%が1年以内に完治したという調査結果が報告されています。
脱毛範囲の広さに関しては、脱毛範囲が狭い場合の方が回復しやすく、広いと完治しにくいと考えられています。
また、発症による経過時間の差に関しては発症から1年以内であれば、80%と高い確率で完治することがみられたのに対して、3年程度と長い例では完治の可能性が低かったという結果が報告されています。
また、円形脱毛症の中でも多発融合型や蛇行型の脱毛症は完治が難しいとされています。
円形脱毛症の初期症状
円形脱毛症の初期症状について解説していきます。
脱毛斑が出現する
円形脱毛症に気づく方の多くは、ある日突然脱毛斑が出現しているのに気付いて初めて知るという方は多いようです。
爪に凹凸が出現する
円形脱毛症を発症した方の4分の1には爪に点状の凹凸が生じる、横方向に溝が入るなどの変化が生じたということが確認されています。
これは、髪と爪は構造的に類似しているからだと考えれれています。
爪の状態を確認しておくことで円形脱毛症を早期に発見することが出来ます。
治療は何科を受診すればいいのか
円形脱毛症の治療では、皮膚科の医療機関の受診が必要になります。
治療には健康保険が使えるので、円形脱毛症の気になる症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。
治療法は、上記で解説したもの以外にも内服薬や外用薬、冷却治療があり、医師の診断によって様々な組み合わせで治療していきます。
円形脱毛症の治療法とは
代表的な円形脱毛症の治療法について、円形脱毛症診療のガイドラインの中でも推奨度B以上の治療法を解説していきます。
ステロイド局所注射療法
推奨度 B
S1(脱毛面積1~24%の脱毛)以下の単発型および多発型の成人症例に行うよう勧める
ステロイド局所治療法には発毛効果に関する根拠があり、特にS1(脱毛面積1~24%の脱毛)以下の脱毛症の方に勧めるとしています。
ただし、いくつかの報告には局注部位に委縮や疼痛,血管拡張が報告されており十分な注意が必要としています。
また、脱毛部位が広範囲であればかなり多くの局注回数を必要とする為、他の治療法の検討が必要と考えられています。
局所免疫療法
推奨度 B
年齢を問わず,S2(25~49%の脱毛)以上の多発型,全頭型や汎発型の症例に第一選択肢として行うよう勧める.
局所免疫療法も添付しない部分と比較して脱毛範囲が委縮したということから、信憑性の高い根拠が見出されている治療法です。しかし,甲状腺疾患を伴う症例では反応が乏しいとされています。また接触皮膚炎症候群,局所のリンパ節腫脹,頭痛,倦怠感,蕁麻疹,色素沈着,色素脱失などを併発することがあるので注意が必要であるとされています。
特にアトピー性皮膚炎の合併例ではその皮膚症状が悪化する可能性があると考えられています。
まとめ
今回は女性や子どもでも発症する可能性のある円形脱毛症について解説しました。
円形脱毛症は生命に危険を及ぼす重篤な疾患ではありませんが、心理的には社会生活を円満に行えない人もいるほど、強いストレスを感じてしまう場合もあり、円形脱毛症の治療と合わせて心理的サポートやケアが必要だと考えられます。
円形脱毛症は早い治療の方が完治しやすい症状です。
円形脱毛症の可能性を感じたのであれば、すみやかに専門医の受診をおすすめします。