加齢による薄毛の原因を知っていますか?メカニズムを解説

加齢による薄毛の原因を知っていますか?メカニズムを解説

髪の毛の脱毛の原因にはAGA(男性型脱毛症)、円形脱毛症、脂漏性皮膚炎などの皮膚病に伴う脱毛、内科的疾患に伴う脱毛、老化現象による脱毛の5つが考えられます。
今回はその中で“老化現象による脱毛”のメカニズムを解説していきます。

“老化現象”とは

そもそも、老化現象は一体どういうことが体内に起こっている現象のことなのでしょうか?
老化とは一般的に成熟期以降に起こる生理機能の衰退の意味を持っています。

男性の場合、成熟期は32歳前後とされているので、それ以降の身体における衰えは“老化現象”と考えられます。

老化の仕組みについては古くから諸説提唱され、線虫や培養細胞、老化モデルマウスなどを用いた老化研究が盛んに行なわれてきましたが、実際に生体内でどのような変化がおこっているのか、老化の仕組みについての解明は困難とされています。
老化のスピードは成長のスピードに個人差があるのと同様に、個人差があり、体の中の組織や細胞によってもそのスピードが変わってきます。

人それぞれの老化のスピードが違うし、自分の体内の組織や細胞も老化のスピードって違うんですね。
鈴木亮輔
そうなんです。
だから、一部の細胞や組織の老化が進んでいても他の組織は実年齢よりも若い、なんてこともあり得るのです。

老化現象はいつから起こるのか?

老化現象は細胞レベルで考えると生まれた直後から開始していると言えます。
ヒトの胎児から摂取した細胞は、およそ50回ほど細胞分裂をした後限界を迎えたという研究データもあります。

細胞分裂がこれ以上行われない状態になった細胞は“老化細胞”と呼びます。
老化細胞に増殖を促す処理を施しても再度細胞分裂による増殖が開始されることはありません。
若い頃は老化細胞は取り除かれ、その代わりに新しい細胞が補充されて組織としても機能を保っています。
しかし歳を重ねることで細胞の入れ替わりのスピードが遅くなり。取り替えること自体ができなくなると組織の機能が低下していくのです。

年を取るとなぜ髪の毛が薄くなるのか?

先程体内の老化現象は“細胞分裂が行われなくなり、細胞自体の増殖がしなくなったこと”とお伝えしましたが、髪の毛が加齢によって薄くなることも同じことが言えます。
髪の毛の場合、毛包幹細胞が細胞分裂しなくなることで薄くなっていくという研究結果が出ています。

毛包幹細胞とは分裂と分化によって、毛をつくるために必要な毛乳頭や毛母細胞に細胞に変化する細胞です。

加齢による薄毛・脱毛のメカニズムの研究結果

年を取ると髪の毛が薄くなるというメカニズムに関する研究結果を紹介致します。

研究内容

毛を生やす小器官である毛包が幹細胞を頂点とした幹細胞システムを構築していることと、マウスにおいても加齢によって薄毛が見られることに注目し、マウスの毛包幹細胞の運命を生体内で長期に渡って追跡し、ヒトの頭皮の加齢変化と合わせて解析しました。

研究結果

髪の毛をつくるために必要な細胞を供給している毛包幹細胞は、通常毛周期(ヘアサイクル)ごとに分裂しますが、加齢に伴って分裂・増殖しなくなり、毛をつくる細胞を生み出す代わりに、表皮の角化細胞へと運命をかえたのち、皮膚表面から落屑する(フケ・垢として脱落していく)ことがわかりました。

これによって毛包自体が矮小化(ミニチュア化)するため、生えてくる毛が細くなって失われていくことが明らかになりました。

加齢による毛包のミニチュア化の解説

引用:東京医科歯科大学

年をとるにつれて髪の毛に必要な細胞を供給するという毛包幹細胞が分裂・増殖しなくなることで、毛包が小さくなって、生えてくる髪の毛も小さく細くなって抜けていくんですね…。

毛包のミニチュア化は、AGA(男性型脱毛症)に特徴的な変化であると考えられてきましたが、生理的な加齢変化としても同じように進行することが分かりました。

ミニチュア化した毛包の画像

引用:東京医科歯科大学

健常人の加齢に伴う頭皮毛包のミニチュア化(矮小化)
写真(上)矢印:40歳女性頭皮の標準的な毛包と拡大図
写真(下)矢頭:59歳女性頭皮の矮小化した毛包と拡大図

毛包幹細胞の維持においては、コラーゲンが分解され、これによって毛包幹細胞が幹細胞性を失って表皮角化細胞へと分化するよう運命づけられることがマウスでの実験で分かりました。
その結果はヒトの頭皮の毛包においても同様ということも研究結果からわかっています。

マウスの毛包幹細胞においては、コラーゲンが枯渇しないようにすると、一連の加齢変化を抑制することができるということが分かりました。

加齢による脱毛の原因

原因1. コラーゲンの減少で毛包の活動が停止する

年齢を重ねると髪が抜けて薄毛になる原因に、コラーゲンの減少があります。
髪が育つためには毛包という器官が正常に働くことが重要です。

コラーゲンの一種である17型コラーゲンには毛包のもとになる幹細胞を守る役割がありますが、加齢により分解する酵素が増えてしまうと、幹細胞の分裂が正常に行えなくなってしまいます。
すると、毛包は活動を停止して髪は抜け落ち薄毛が進行してしまいます。

原因2. 細胞の新陳代謝が衰えることで髪が育ちにくくなる

髪が健康に育つためには、細胞が新しく生まれ変わるための新陳代謝が行われなければなりません。
しかし、加齢により代謝機能が低下してくると、髪を育てる力が弱くなり抜け毛を起こりやすくなります。

原因3. 加齢によるヘアサイクルの乱れで成長期が短くなる

髪は一本一本が、成長期、後退期、休止期の毛周期(ヘアサイクル)を繰り返しており、その中で毛母細胞が分裂を繰り返して髪が太く、大きくつくられる成長期は、通常2~7年になります。

若い年代では、全体の約90%が成長期の髪ですので、抜け落ちても新たな髪が次から次へと育つため、薄毛になることはありませんが、年齢を重ねると細胞分裂が鈍くなることによって成長期が短くなり、抜け落ちるまでの周期も短縮するため、抜け毛が増えて薄毛を招くようになります。

最後に

加齢による薄毛のメカニズムについて解説しました。年齢が重なるにつれて体内の細胞分裂が鈍くなります。
体内で行われる変化なので、もちろん髪の毛に関する細胞や組織でも同じように細胞の分裂・増殖が鈍くなっていきその影響で髪の毛が細くなり、薄くなっていくということが判明しました。

本記事の寄稿者情報

鈴木亮輔
31歳独身。趣味はPCの自作と猫カフェ巡り。新宿のIT会社に勤務するサラリーマンです。20代中盤から徐々に抜け毛が増えて薄毛(M字部分)になり始め、長年に渡り自身で育毛剤を自作するなどの抜け毛や薄毛の改善方法を模索した実体験や、AGAクリニックの通院体験を活かして記事の執筆をしています。薄毛に悩む人は一人でも減ることを祈って、薄毛や育毛対策に有効となる情報を発信をしていきます。
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