
皆様は「塩シャンプー」というシャンプー方法をご存知でしょうか?
以前、セレブや芸能人の間で「湯シャン(シャンプー剤を使わずにお湯だけで洗髪する方法)」が流行しましたが、次に登場したのがこの「塩シャンプー」です。
“塩シャンプーは髪を生やす”というニュースを目撃したので、塩シャンプーの方法や効果について解説していきたいと思います。
目次
塩シャンプーとは
「塩シャンプーとは一体何?」と思われる方や初めて聞く方も多いと思うので、まずは塩シャンプーとは一体何か?解説していきたいと思います。
塩シャンプーの方法は大きく分けて2つあります
- 塩を溶かしたお湯で頭皮の汚れや皮脂を洗い流す方法
- シャンプー剤に塩を加えて洗髪する方法
以上の2つの方法です。
塩シャンプーのやり方
先程、塩シャンプーには2つの方法があるとお伝えしました。それぞれのやり方を解説していきます。
塩を溶かしたお湯で頭皮の汚れや皮脂を洗い流す方法
- ぬるま湯やお湯を洗面器に用意し、塩を入れて溶かします。
塩の量は洗面器に対して大さじ1杯の量が目安になります。 - 髪や頭皮をお湯のみで予洗いします。
- 先程洗面器に準備した塩の溶けたお湯を少しずつゆっくり頭皮にかけながら洗髪していきます。この時、髪と頭皮を揉みこみながら流すことでより全体に行き渡らせることが出来ます。
- 何度か繰り返します。
全体をお湯のみで良く洗い流します。この時、塩の溶けたお湯が頭皮や髪についたままにしているとトラブルの原因にもなるので注意して下さい。 - 全体を良く洗い流したらシャンプーは終了です。
髪のきしみが気になる場合は洗面器いっぱいにはったお湯に大さじ1程の酢を溶いた酢リンスを用います。 - 最後に再度全体をよく洗い流したら終了です。
シャンプー同様、髪や頭皮に酢リンスが残らないようにしっかり流して下さい。
シャンプー剤に塩を加えて洗髪する方法
手持ちのシャンプーを手のひらに乗せて、大さじ1杯ほどの塩を泡立てながらよく混ぜて、通常通り洗髪します。
中には、シャンプーボトルの中に直接塩を混ぜたものをそのまま髪につける方法を解説しているところもありますが、シャンプーボトルに直接塩を混ぜることはおすすめしません。
シャンプーは風呂場という湿度が高く、日が入りにくい場所で長期間保管します。
そういった環境下で長期間保管すると、シャンプーは腐りやすくなります。
シャンプーは製造工程では一定期間の腐敗に耐えるどうかのチェックもされます。
しかし、シャンプーのボトルの中に塩を入れるとシャンプーのPhやイオンバランスが本来のものとは変化してしまいます。
つまり、シャンプーボトル内が通常よりも腐りやすくなってしまう可能性があるのです。
このことからも、シャンプーのボトル内に何か特別なものを入れるということは、皮膚に対してどんな悪影響を及ぼすか予想できないので絶対にやめた方がいいと言えます。
塩シャンプーを行う理想的な頻度
塩シャンプーは肌が弱い方にとっては刺激になり、何らかのトラブルになる可能性があるので、週1~2回を目安に使用するのが理想です。
塩シャンプーをする前に、1度二の腕等の肌の弱いところでパッチテストをして確認してからにすると、より安心です。
塩シャンプーをする際の注意点
海に行った後、髪の毛がごわごわになってしまった経験はありませんか?
塩水はpHがアルカリ性に傾きます。
すると、髪を構成している1番外側の層であるキューティクル層が開き、それによって髪の毛同士が引っかかってゴワゴワとした手触りを発生させます。
それを解消させるためには塩シャンプー後にアルカリ性に傾いた髪を酸性リンスを用いて中和することが必要です。
酸性リンスを使用することでキューティクルが閉じてサラサラの状態を復活させることが出来ます。
塩シャンプーの髪や頭皮に対するメリット
塩シャンプーに関するメリットとして挙げられているのは以下の点です。
- 白髪がなくなる
- 頭皮の嫌な臭いがなくなる
- 髪がサラサラになる
- フケがなくなる
- 頭皮のかゆみがなくなる
- 湿疹などの炎症が治る
以上の点は、あくまでもメリットとして考えられるだけで実験による正式なエビデンスに基づくものではありません。実際はこのような効果が期待できるのか考察していきたいと思います。
塩シャンプーの効果についての考察
白髪がなくなる
塩シャンプーには白髪を減らす効果があると言われていますが、これは医学的根拠のない都市伝説的なものだと言えます。
白髪が発生するメカニズムは、毛根内部のメラノサイトが髪を黒くする(日本人の場合)メラニン色素を生み出す機能が何らかの原因で機能しなくなり、メラニン色素を含まない毛(つまり、色のない白髪)が生えてくることです。
メラニン色素が生み出さなくなる理由は、ストレスや血行不良、遺伝、活性酸素などの原因が考えられていますが、正確な理由に関してはまだ解明されていません。
そして、塩そのものにはメラノサイトに働きかけてメラニン色素を発生させる力はないのです。
頭皮の嫌な臭いがなくなる
塩シャンプーによって頭皮の臭いがなくなる、もしくは減る効果は期待できます。
頭皮の臭いの原因の1つには皮膚常在菌の1種「マラセチア菌」の異常繁殖が考えられます。マラセチア菌は皮脂の中の中性脂肪を酵素で分解し、脂肪酸を排出しています。
この脂肪酸が嫌な臭いの原因になります。
つまり、このマラセチア菌が異常に繁殖してしまうと、排出される脂肪酸の量が増えて臭くなるのです。
塩には微生物を殺菌し、繁殖を抑制する効果があります。
漬物を思い出していただくと分かりやすいと思いますが、漬物は常温保存にも関わらず腐敗しにくい食べ物です。これは塩の持つ殺菌効果が大きく関係しているのです。
シャンプーで塩を使うことで雑菌を殺菌し、繁殖を抑制することができると考えられ、頭皮の臭いを抑制する効果が期待できます。
髪がサラサラになる
塩シャンプーの使用感想でよく目にするのが“最初はギシギシするが、続けていると髪がサラサラになる”というものです。
このように言われるようになった理由を考えてみると、そのうちの1つに強すぎる洗浄成分のシャンプーを使っていた人の場合、シャンプーが原因できしみが発生していたが、それがなくなる分サラサラに感じるということです。
ただし、この場合は塩の影響で髪がサラサラになった訳ではなく、あくまでも強力なシャンプーを使用していた時に感じていたキシミやゴワツキよりもサラサラに感じたということに過ぎません。
フケがなくなる
塩シャンプーの効果でフケが出なくなるというのは、脂性フケの方には当てはまると考えられます。
まず、フケは大きく分けて乾燥性と脂性のフケがあります。
乾燥性のフケは水分がなくカサカサしていて頭を掻くとパラパラと落ちてきます。
一方、脂性のフケは湿ってべたついていて、頭皮や髪にくっついている場合が多いのが特徴です。
脂性のフケの原因は、先程頭皮の臭いでも解説した「マラセチア菌」が原因になります。
このマラセチア菌は通常、皮脂の中の中性脂肪を酵素で分解し、脂肪酸を排出していますが、過剰繁殖して脂肪酸が過剰になると肌への刺激が強まり、それが原因で炎症やかゆみを引き起こしフケを引き起こします。
塩には殺菌作用と、雑菌の繁殖を抑制する効果が期待できるので、脂性のフケには効果があると考えられます。
頭皮のかゆみがなくなる
頭皮のかゆみもフケと同様な考え方ができます。
塩による殺菌作用によって菌に起因する頭皮の炎症を抑え、かゆみを抑制することが期待できます。
湿疹などの炎症が治る
湿疹や炎症が治るということは、有り得なくもないと言えます。
フケやかゆみ同様の考え方ができるからです。
頭皮の湿疹や炎症が雑菌が原因によるものであれば抑制できると言えます。
ただし、頭皮の湿疹や炎症は生活習慣やストレス、使っているシャンプーの成分が原因の場合も考えられるので、シャンプーに塩を入れたからと言って湿疹や炎症が治るということは言えません。
湿疹や炎症がある場合、自己判断で処置をすると悪化する可能性もあるので、専門医の受診をおすすめします。
塩シャンプーによって髪が生える噂について
塩シャンプーに含まれる塩は殺菌効果と雑菌繁殖抑制効果があるので、マラセチア菌を殺菌し過剰繁殖を抑え、それによって菌が原因によるフケ・かゆみ・炎症・臭いの抑制が期待できます。
ただし、“塩シャンプーで髪が生える”ということを強く勧めるのには疑問があります。
ます、髪が薄くなる直接の原因として考えられるものは5つあります。
- 円形脱毛症
- 皮膚病に伴う症状
- 内科的疾患に伴う症状
- 老化現象
- AGA(男性型脱毛症)
①の円形脱毛症ですが、これはアレルギーや自己免疫疾患によって引き起こされ、ステロイドを入れるブロック注射によって治療していきます。
②の皮膚病に伴う薄毛の症状は、脂漏性皮膚炎が考えられます。この場合、マラセチア菌の過剰繁殖が影響するため抗菌薬を使って治療していきます。
③の内科的疾患に伴う薄毛の症状は、甲状腺や重度の糖尿病が考えられ、まずこれらの病気を治すことが回復の一歩になります。
④老化現象に伴う薄毛は、老化に伴い髪の毛を誕生させる力が弱ることが原因です。
⑤のAGA(男性型脱毛症)はテストステロンが5αリダクターゼ還元酵素と結合した後、ジヒドロテストステロンが誕生し、これがさらにアンドロゲンレセプター(受容体)と結合することでヘアサイクルが乱れ、髪が抜けていきます。AGA(男性型脱毛症)の治療薬にはテストステロンと5αリダクターゼ還元酵素との結合を阻害するものと、成長因子の分泌を促進し、毛母細胞の細胞分裂やタンパク質合成を促進して発毛を促すものの2つがあります。
上記で説明した通り、塩シャンプーが薄毛の原因に直接アプローチできるものは②の皮膚病に伴う原因のみです。
それ以外の原因は雑菌の過剰繁殖以外が起因していているので、塩の効果で発毛させて薄毛を改善させたということは考えられません。
薄毛の原因の多くは⑤のAGA(男性型脱毛症)ということが分かっています。
それを踏まえるといささか、“塩シャンプーで髪が生える”という広告文句の誇張表現感は否めません。
更に塩はあくまでも塩で、治療薬の効果に比べると劣ります。
確かに塩は家庭にあり、安価かつ手軽に取り入れられますが、頭皮に炎症やかゆみが生じている場合は病院に行って、医学のエビデンスに基づく治療薬を用い、早急に治すことの方が望ましいと言えます。
自己判断で塩シャンプーをすることによって、症状が悪化したら元も子もありません。
まとめ
“塩シャンプーで髪が生える”という点に関して考察した結果、塩シャンプーで髪は生えないと考えられます。
確かに塩には殺菌作用や雑菌繁殖効果があり、頭皮の雑菌繁殖を抑えてフケやかゆみを防ぐことが期待でき頭皮の発毛環境を向上させることが出来るかもしれません。
しかし、それならば医学のエビデンスに基づいた治療薬を使うべきですし、個人判断で塩シャンプーをしたことによって、塩の結晶が頭皮を傷つけてさらに炎症がひどくなる可能性を考えるとおすすめできません。
また、薄毛の原因にアプローチできる効果も塩そのものにはないので、“髪が増えた”という広告は誇張表現と感じずにはいられません。
塩シャンプーをするならば専門医の治療を一刻も早くすることをおすすめします。
髪が生え変わるヘアサイクルの回数には限界があるのですから。